シチリア第2話
3日目の朝、ようやくワイナリーツアーのプログラムに入る。
まずは朝イチからバスに乗り込み畑の見学に行く。ワイナリー近くのホテルから彼らの原点である「FICUZZA」の畑に行く。約1時間、バスにゆられて標高600〜700m辺りの山あいの集落に向かう。この「FICUZZA」という山あいのエリアは、あのゴッドファーザーで有名な「CORLEONE」の村の近くで、途中まで「CORLEONE」の標識を追って車を走らせる。ずっと「CORLEONE」に向かって走り、あと数キロの所まで行くとようやく「FICUZZA→」の標識がある。
このFICUZZAでは、主にシャルドネ、ピノ・ネロ、インソリアが植えられている。標高が高い分、透明感のある酸が効いたシャープなブドウができる。クズマーノの白の代表「JALE」「CUBIA」もここから生まれる。
このFICUZZAのエリアはもちろん、CORLEONEも真冬にかなりの雪が降る事がある。というよりは、ほぼ毎年のようにかなりの積雪になる。
仕事柄、真冬にシチリアに行く事は少ないのだが、以前お正月に行った時には、海岸線レベルのパレルモ空港でも雪が積もり、飛行機の離発着時間が大幅に狂った事があった。
冬に大量の積雪があった年というのは、良いブドウができる可能性が高い。雪と雨の違いで言えば同じ降水量の場合、雨はすぐに地中に吸い込まれ立体的に積もる事はない。しかし雪の場合、立体的に積もるので、春先まで水分を地上に溜めている事になる。それが少しずつ溶けて少しずつ地下に戻って行く。
なので、春半ばまでたっぷりの水分を溜めこむ事ができるのだ。
ブドウの木の冬眠から春の芽吹きにとても良いコンディションが出来上がるわけだ。
FICUZZAのエリアはカルシウムとミネラルが豊富な石灰質土壌で土が白い。
雨が少ないこの時期は太陽の反射でまぶしいくらいだ。
この日も大変天気が良く、畑の土はまっ白に乾いていた。
FICUZZAに行く目的は畑を見てもらうのはもちろんの事、参加者全員に収穫用のハサミを持っていただき、実際に収穫を体験してもらうのが一番の目的。
「この畑はインソリア!!」「ここはピノ・ネロ!!」などの説明を聞きながら畑を見て廻る。当然この時期なので、すでに多くの人が収穫の仕事をしている。
彼らはこの時期だけ(約1ヶ月)近隣諸国から集まって来た出稼ぎ労働者である事が多い。クズマーノの場合は、毎年同じ労働者チームにお願いをしているので、季節労働者と言えども畑の隅々まで良く知っている。
そして私達日本人初体験チームはそこに混ぜてもらい、彼らの指示で収穫を体験させてもらう。10kg程度入るバスケットを2箱分程、実際にブドウをカットして行く。そしてそれを食べてもらう。いつも思うのだが、シャルドネ、ソーヴィニョン、ここではインソリア、イタリアの赤(黒ブドウ)で言うとネビオロ、サンジョベーゼ、ここではネロ・ダーヴォラ。正直、ブドウを生で食べても私にはどれもほぼ同じ味がする。ワインになってようやく大きな味の違いがあるが、ブドウを生で食べても甘い!!としか言い様がない。あれを食べて、「うん、これはシャルドネ。」「これはピノ・ノワール」とか分かる人がいるのかなぁ。
約1時間程畑を見て、ブドウの収穫をして、丘の上でカンノーロを食べてFICUZZAの畑を後にする。また、1時間かけて街に戻り、いよいよクズマーノのワイナリー訪問をするのだ。