中部イタリアといえば一般的にはどのあたりを想像するのだろうか?
北限は、エミリア・ロマーニャ州ボローニャあたりからであったり、トスカーナ州フィレンツェあたりの南側であったり。
南限は、ラツィオ州ローマの少し南側まで、またはカンパーニア州ナポリの少し北側までが中部地方に入っていたりするので、どこからどこまでが中部なのかはむずかしい線引きになってしまう。
私が思う中部イタリアは、北限でいえばフィレンツェを中心に西側がピサ・リヴォルノ、東側がアンコーナあたり。南限は西側がローマ、東側がペスカーラあたりまで。州でいえば、トスカーナ州、マルケ州、ウンブリア州、アブルッツォ州、ラツィオ州あたりが中部イタリアではないかと思っている。
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となると、一般的なイタリア旅行といえばこのあたりの中部イタリアが圧倒的に多いのではないか。「イタリア周遊8日間」のパンフレットなどは、少し北東側のヴェネツィア~フィレンツェ~ローマの3都市であったり、「ミラノ~ヴェネツィア~フィレンツェ~ローマの4都市を廻る9日間」とかを良く見る。
私にとってもこのあたりは大好きな街で、ゆっくりと旅をするには最高に美しく、楽しい思い出がたくさん作れそうな気がする。街の美しさやホテルの充実度、食事の美味しさは間違いなく、素晴らしい思い出を写真に残せる。私も仕事柄このあたりの街には良く行くが、何度行ってもやはり美しいなぁ~と感動する。
ただ私の場合は、これらの美しい街に長く滞在する事はなく、飛行機の乗り替えの為の1泊であったり、お客様と一緒に旅行する時に1日だけ街に繰り出したりする程度で、ほとんどの場合はその美しい街から車で1~2時間離れた郊外の四方を山や丘に囲まれたブドウ畑が延々と続いている景色である事が多い。
今回と次回の旅日記では私の思う中部イタリアの南限に当たるアブルッツォ州のワイナリー・コッレフリージオ(COLLEFRISIO)について書いてみよう。
2010年までは別のアブルッツォの生産者のワインを販売していたが、そのワイナリーの運営方針が大きく変わり(おそらく大手ワイナリーの傘下に入った)、急に今後の取り組みなど色々とむずかしい問題が出てきたので、「それでは…」という形で終止符を打つ事になった。その後フードライナーとして、アブルッツォ州のどこのワイナリーとやっていこうかと真剣に考えた。というのは、その頃からアブルッツォのワインが大きく変わろうとしている時期だったからだ。
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基本的にこのエリアは、プライベートなワインの生産者が少なく、多くのワインは生産者協同組合の手によって世界中に販売されている。州のワインの生産量はイタリア国内でも第5位、イタリアで生産される総生産量の約6%を占め、約30万キロリットルもある。(ちなみに第1位はヴェネト州で約22%を占める)
しかし、アブルッツォ州で生産されるワインの約8割は、州外でビン詰めされている。という事は、とても品質が良いワインであるのに、州外に桶売り・バルク売りをしてしまっている。それはワインを液体としてアブルッツォ州から仕入れ、トスカーナ・ヴェネト・プーリア・ラツィオあたりのボトラーが、好き勝手なワインの名前をつけて売られている現状がある。
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もともとアブルッツォ州はブドウ栽培にとても恵まれていて、とても質の高いワインを造れるエリアだ。一方が海で背後に標高の高い山があり、涼しい山からの空気・風があるからだ。だからそれほど苦労せずに質の高いワインが出来上がる。
しかし、私達が2010年コッレフリージオのワインの輸入を始めた頃、アブルッツォではそれほど大きくない家族経営的規模のワイナリーが、より一歩先のワイン作りに動き始めていた。有機栽培やビオデナミ、バリック熟成で仕上げる高品質ワイン。たとえば、モンテプルチアーノ・ダブルッツォは、美味しいけれど価格的にはかなり安く販売されていたし、他の州で進んでいたワイン1本の価格に対して価値より量的な販売をしていた。しかし、2010年あたりから家族経営的生産者がそれぞれの努力で一気に高品質なワイン作りに動き出していた。
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コッレフリージオ社もそのひとつで、まずブドウ栽培から見直している頃だった。私とコッレフリージオ社の初めての出会いは、2003年~2004年頃にすでに始まっていた。先にも書いたように2009年まで弊社はアブルッツォの別のワイナリーと取引をしていたが、2003年~2004年に当時のイタリア貿易振興会から4泊程のアブルッツォの招待旅行に招かれたことから次のドラマが始まった。