Italia Trip

Mr.Kのイタリア旅日記 vol.26

2024.02.28
 

昨年の秋、久しぶりにピエモンテをしっかり見直したいと思い、ASTI、ALBA、BAROLO、BARBARESCO、GAVI、ROEROを巡る8日間の短い旅をした。
テーマは1日1件のワイナリーだけを時間をかけて改めて勉強すること。相手の都合など考えずアポを入れ、朝から晩までお付き合いいただいた。
結果を先に言ってしまえば、とても勉強になったし、知らない事を改めて知る素晴らしい時間であった。

今回はレンタカーは借りない、自分で運転をしないと決めていたので、ミラノ・マルペンツァ空港からはタクシー移動である。
タクシーは初日に訪問するワイナリーに頼んで用意してもらった。そのカードを引いたのは、とても長い付き合いのあるBRAIDA社(ブライダ)アスティだ。

ミラノ・マルペンツァ空港着が早朝だったこともタクシー移動のもう一つの理由でもある。初めて利用したアブダビ経由のETIHAD(エティハド)航空は早朝06:30のミラノ到着だったから、ブライダの人に迎えに来て下さい、と言うのも申し訳ないし、かと言って電車やバスでアスティまで自力で行くなどは考えられない選択なので、(そんな選択をすればいつ着くかわからない)何も考えずにブライダのオーナー・ラファエラにタクシーをお願いした。

ただ嬉しかったのは、空港到着口を出た瞬間に「Ciao! Kyozo! Come stai?」と待っていたタクシードライバーが声をかけてくれたことだ。
マルコさんだったか、カルロさんだったか以前にも何度かお世話になった親切なドライバーで、16 時間の長旅の疲れを一気にほぐしてくれた。同時に半年ぶりのイタリアを感じさせてくれた。
早朝の張り詰めた冷たい空気、周りから聞こえてくるイタリア語。あ〜着いた!
嬉し楽しイタリアントリップのはじまりだ。

約1時間で初日の訪問先ブライダ・ワイナリーに到着。久しぶりという感じではなく、どちらかと言えば「ただいま」的感覚。ほぼ毎年のように訪問しているワイナリーで30年近い付き合いなので、親戚のような関係になっている。とはいえ毎年ワイナリーのどこかは変わっていて、気候の変化、そこから来るブドウの変化に対応する為に改良を繰り返している。但し、これはブライダ社に限った事ではない。そのような技術的変化は後に書くことにして、まずは、ブライダ社が最近大きく変わったことを紹介しよう。それは、宿泊施設「BRAIDA WINE RESORT」を開業したことだ。7部屋程度のB&Bで、夏休み・冬休みなど長期滞在にも適している。ヨーロッパはもちろん、世界中のワイン好きがターゲットで、特にイタリア・ピエモンテのワインが好きな人であれば、最適なホテルである。(特に私が今回訪ねた時期は白トリュフが旬を迎える頃なので、ピエモンテ中アルバ・アスティを中心に、たくさんの旅行者であふれていた。)
まだ開業したばかりなので、今後の方針は決めていないようだが、今のところはワイン産地に良くあるB&Bとしてのみ受けている。

アスティ地区のワイナリーが本拠地を置くロケッタ・タナロという街(村)にある丘の上に建てたホテルなので、街全体が見下ろせるし(と言ってもブドウ畑と小さい村があるだけだが…)ピエモンテを訪問する人達にとっては最適なホテルだと思う。ピエモンテのワインに興味がある人であれば楽しめると思うので、ぜひ行っていただきたい。

さて、地球温暖化が話題になって久しいが、ここアスティ・ピエモンテにおいても大きな問題として取り上げられている。
特にワイン関係者には大問題であり、いろいろと影響がではじめている。今回はそのあたりも勉強したくてこの地方を訪問した。だからワイン造りやシステム的な事よりもとにかく畑・ブドウの樹を見てみたかった。

現在、ブライダ社も畑について見直している。ブライダ社が持っている畑(メインはバルベーラ種)は、標高が200m〜300m くらいに位置する畑が多い。
これはピエモンテ全体で考えても標準的な標高である。たとえばバルバレスコ村は250m〜300m だし、バローロでもその辺りが標準である。

よくいわれるのが、白ワインの出来の良し悪しはワイナリーによって左右するということ。これは、白ワインはブドウ畑・土壌・テロワールと言うより醸造技術が優秀であるか、醸造用機材が整っているか、などに関係する。
もちろんワインである以上ブドウが全てあるのには間違いない。
ただ白ワインは赤ワインよりもそのあたりが技術的要素が大きいという意味で、逆に赤ワインは醸造技術やシステムよりもブドウ、つまり畑やテロワールによって味わいの大きな部分が決まるという事である。極端に言えば、白ワインの出来は90%醸造技術が左右するし、赤ワインは90%は畑・ブドウが左右すると言われている。それだけにこの温暖化現象は赤ワインを中心に生産しているワイナリーにとって大問題なのである。この問題についてブライダオーナーであるラファエラにいろいろと話を聞かせてもらった。

現在、ブライダ社は新しい畑の開拓に取りかかっている。
より高い標高の土地を探しているのだ。標高でいうと400m〜500m あたりでブドウ栽培に適している土地に目を向けている。
単純に標高を上げれば良いという問題ではない。先に書いたようにテロワール的要素が一番大事なポイントであるのは間違いない。ブライダ社の場合は圧倒的にバルベラ種中心にワイン造りをしているワイナリーなので、バルベラに向いている土壌であるかが大前提なのだ。

今から30年前と現在では、平均気温、年間降雨量、日照量など全てが違っている。もっといえば50年前から素晴らしいと言われ続けてきたエリア・畑が果たして現在も素晴らしいのか?
ピエモンテはイタリアのブドウ栽培地の中でも冷涼なエリアではあるが、現在は夏に40度を超える日もある。
今まで一級畑は圧倒的に南から南西向きの斜面といわれてきたが、今は東から北東と過去に見逃されて来た丘があらためて見直されている。
このようなことは、ピエモンテ、イタリアだけのことではなく、地球規模の問題だ。我々としてはずっと美味しいワインが飲めることを望む。
さぁ、次回もピエモンテの話題を続けよう。乞うご期待!お楽しみに。Ciao!