Italia Trip

Mr.Kのイタリア旅日記 vol.28

2024.06.20
 

−ENZO BOGLIETTI− La Morra, Piemonte. Nov.2023

前回に続き、ピエモンテの話をしよう。
MR. Enzo Boglietti(エンツォ・ボリエッティ)は、私の大好きなバローロの造り手だ。彼のワインを扱い始めて15年、いやそれ以上は経っていると思う。

彼の作るバローロは、ちょうど良いバランスでモダンな表情とクラシックな表情を持ち合わせている様に感じる。彼のワインの評価が上がって来た頃は現在の味わいよりももう少し力強く濃いイメージもあった。バローロの作り手の多くは、90年代にもてはやされた樽香の効いた“バリック”と言われた仕上げを多用していたが、現在は樽からの影響を表に出さず、本来のネビオロのトーンであったり、テロワールと言われる産地の特性を表現するワイン作りに力を入れている。

昨秋の訪問は、長い付き合いの中で4回目の訪問であった。ピエモンテには毎年必ず1〜2回は行っているし、生産者も訪ねているのだが、ボリエッティにはあまり行かなかった。なぜなら彼は一切英語が話せないので長い時間を共有できないのだ。だから今まで彼とコミュニケーションを取るのは、4月のヴェローナ、VINITALYがメインだった。VINITALYでは、彼の通訳が助けてくれるので最低限のコミュニケーションは取れる。だからセラーへの訪問は少なかった。
今回は今後についての話し合いがしたく、ピエモンテ・アスティに住んでいる友人に通訳をお願いした。

たまたまだが昨年からEnzoの娘さんがセラーで働くようになった。名前はLinda Boglietti(リンダ)。音楽が好きで音楽関係の仕事をしていたが、父親の手伝いを始めた。彼女は英語が話せるので、私にとっては、たいへん助かる事になる。とても素直で親切で気持ちのいい娘さんだ。
父親を尊敬しつつも、友人の様な関係で見ていてとてもなごやかな気持ちにさせてもらい、今回の訪問でより身近に感じるようになった。

さて、Enzo Bogliettiのワイナリーについて少し紹介しよう。
エンツォ・ボリエッティとしてのワインビジネスのスタートは1991年。それまでは祖父母の時代から所有する畑でブドウ作りはしていたが、できたブドウは地元のワイナリーに売っていた。La Morra(ラ・モーラ)にある3ヘクタールほどの畑で質の高いブドウ栽培をしていた。また当時は、ブドウ栽培と同時に牛乳やシリアルも作って販売していたらしく典型的な農家(ある意味自給自足)だったらしい。

今では、ラ・モーラやBrunate・Fossati・Boiolo(ブルナーテ・フォッサティ・ボイオーロ)あたりの南向きの畑は、とんでもない価値があり手に入らない状況になっている。土地が高額だから相当なワインを作って高額で販売しなければ元は取れない。その点からすると元々畑を所有していたというのは、とてもラッキーなことだ。ビジネス中心のワイン作りをしなくても、ある程度余裕を持って自分の思うブドウ栽培、ワイン作りにチャレンジできる。

現在は彼が長年目指してきた有機栽培も順調に進んでおり、多くの畑でBIOの認証を取っている。彼(ボリエッティ・ワイナリー)が所有している畑はラ・モーラの地区に集中しており典型的なピエモンテーゼの形が伺えられる。 ラ・モーラ地区の中でも、BRUNATE(ブルナーテ)に0.5ヘクタール、FOSSATI(フォッサティ)に2ヘクタール、BOIOLO(ボイオーロ)にも2ヘクタール。それぞれのエリアに小さな畑を持っており、一カ所に5ヘクタールや10ヘクタールも所有しているワイナリーは多くない。アスティのエリアには、土地続きで10ヘクタールの畑を所有しているワイナリーはあるが、バローロエリアではむずかしい。標高や丘の斜面が異なるせいなのか、昔からのシステムの違いなのか、そこまでわからないが、バローロに関してはこのように小さく区分された畑で所有者が違うケースが多い。だから個性的なブドウが作られる。そういう所も私がバローロの好きな理由のひとつだ。

ボリエッティ・ワイナリーの合計生産本数は年間で約18万本。種類も多く全部で18〜19種類のワインを作っている。だいたいは、La Morra村でのブドウ作りが中心で、バローロ(ネビオロ)、バルベラ、ドルチェット、シャルドネ、メルロー、カベルネなど幅広いブドウ品種を持っており、現在は約22ヘクタールの畑を所有している。バローロの生産者とすれば、年間18万本(TOTAL)はちょうど中規模か大規模生産者の小さい目くらいにあたる。
フードライナーが取り扱うには最もやり易い規模だと感じている。

彼(ENZO)はピエモンテの生産者からも面白く一風変わった男として良く知られていて、かなりの人気者であるように聞いた事がある。 いつも楽しそうで、いつも笑っていて、ピエモンテ人同士でも聞き取りにくいキョーレツな方言で話す。笑いながらしゃべるので、どうにも分かりづらいようである。早い話、何を言っているのかわからない?らしい。

先に述べたように、今まで彼との接点は主にVINITALYの会場であった。
常に数多くのワインの試飲から始まる。その時に試飲をするワインの多くは当然の事ながらその年に売り出すNew Vintageになる。
白ワインやロゼワイン、軽めのドルチェット、バルベラと進んでいく。
そして、いよいよBAROLOになって行くのだが、それがまた数が多い。
ENZO BOGLIETTIのバローロの多くは、La Morra(ラ・モーラ)のCruばかりだ。
1.BRUNATE(La Morra)ブルナーテ
2.FOSSATI(La Morra)フォッサティ
3.BOIOLO(La Morra)ボイオーロ
4.CASA NELE(La Morra)カーザ・ネッレ
5.ARIONE(Serralunga d’Alba)アリオーネ
全部で5種類。
1種類だけLa MorraではなくSerralunga d’Alba(セッラルンガ・ダルバ)。
速いテンポで順番に試飲するのだが、正直よく分からない。

たとえばBrunateとBoioloは同じ丘のほぼ同じ斜面で少し位置が違うだけ。もっと言えばArioneはセッラルンガ・ダルバで、これはラ・モーラからはかなり南に位置している。基本的には全然違う味わいに仕上がるのが普通である。
La Morraは、やさしくエレガントなタンニンであり、Serralungaは力強い骨太なタンニンとされている。これこそがテロワールだと彼は力説してくれる。
しかし、できたてのバローロを口に含んだときにまず感じるのは「どちらも渋い」。後味にほんの少しの甘味を感じたり、果実味を感じたりする程度で、私自身は大きく違いを感じるほどの舌は持ち合わせていない。

1〜5のバローロの順番を変えて再度ブラインドで試した時に当てる自信がないほど、すべてがEnzo Bogliettiの味わいなのだ。おそらく2〜3年経ってそれぞれを飲み比べた時には、もう少し違う味わいに熟成しているのだろうが、できたての段階では「全て渋い」になってしまう。当然微妙に違いはあるのだろうが、これはBrunate!! これはFossati!!の判断はかなり難しい。
ちなみに彼のArione(Serralunga)はあの有名なConterno Giacomo Franciaの隣の畑で、Arioneの一番西側とFranciaの一番東側で引っ付いている。なので最良のネビオロが収穫できている。
しかし、価格は3分の1から5分の1。ここが大きなアピールポイントとなる。
ENZO BOGLIETTIのバローロは全てCru(クリュ)の仕上げで、地区ごと畑ごとでそれぞれ別のワインにしていた。
もちろん現在もその通りで別々のバローロを作っている。しかし3年程前からCru(クリュ)以外にブレンドして作るバローロを作り出した。
Brunate+Fossati+Boiolo+Casa Nere=「Barolo Comune di La Morra」
La Morraniにあるそれぞれの単一畑のブドウをブレンドして、彼の言う“それぞれの個性を合わせ持ったBarolo”である。
間もなくそのブレンドしたBaroloが私達の倉庫に届く。
価格も少し控えめでEnzo Bogliettiの新しいBaroloにぜひ期待していただきたい。次の機会にもっと詳しくBaroloを書いてみたい。ではCiao!!!